《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》 ルノワール

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Dance at Le Moulin de La Galette 

 

この作品は、1870年代に描かれたルノワールの最も重要な作品で、1877年の印象派展に発表されました。画面には、ルノワールの友人や知人たちが登場しますが、ここで画家の主たる目的は、モンマルトルの丘で人気だった、野外のダンス場の活き活きとした、喜ばしい雰囲気を伝えることにありました。

この作品が描かれた頃、モンマルトルはまだパリの郊外にすぎず、庭園や空地に混じっていくつかの風車がありました。ムーラン・ド・ラ・ギャレットなるダンス・ホールは、ドゥブレー家が所有する二つの風車の間に建つ大きな倉庫の中にありましたが、暖かい時節には、隣接する広い庭で舞踏会が催されたのでした。日の光がアカシアの木の間から漏れる野外のダンス場で、男女が喜びと幸せに満ちた青春の讃歌をゆらめく光の中で繰り広げています。自然光や人工の光を浴びた動きのある群衆の観察は、活気に満ちた明るい色の筆が用いられました。

パリジャンの暮らしぶりを瞬間的に切り取ったこのポートレートを、ルノワールはひと夏を掛けて創作に費やしました。革新的なスタイルと堂々とした型で、印象主義の手法を大画面の人物構図に適用したといえます。ルノワールの最も野心的なこの作品は、しばしばオルセー美術館のガイドブックの表紙にもなることも多い、印象派初期時代における代表的な名画です。2016年東京に初来日した展覧会「オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵 ルノワール展」では、当時のムーラン・ド・ラ・ギャレットのダンス・ホールを表した映画映像などの演出により、普段オルセー美術館では見られない雰囲気の中で作品の魅力が一層惹き立っていました。