《モスローズ》 ルノワール

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モスローズというのは、つぼみに苔(Moss)のような腺毛がついたバラで、日本では「苔薔薇」と呼ばれたオールドローズの品種です。突然変異で誕生し、ビクトリア時代に流行したバラとしても知られています。花言葉は、「尊敬、愛の告白、無邪気、可憐、崇拝」など。

これは、50歳頃のルノワールが描いた作品でした。印象派から誕生した画家が印象派を乗り越え、探究し続けた独自の作風が確立していた頃でもありました。バラの形よりも、その自由なタッチで表現した幾重にも重なり合った花弁の印象を捉えた様子から、印象派時代の作風に近づけた作品といえます。

この作品は、当時医師で印象派の収集家でもあったジョルジュ・ヴィオ(1855-1939)が入手し、1907年まで手元に置いていました。その後、ルーヴル美術館絵画部門の学芸員として、モネ展やルノワール展などの回顧展を手掛けたポール・ジャモ(1863-1939)の手に渡り、最終的に国家に寄贈されました。